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微分幾何学・幾何解析学
リーマン対称空間内の部分多様体および平均曲率流(より一般に曲率流)と呼ばれる部分多様体の時間発展(リーゾナブルな変形)について主に研究しています。その研究方法は次の通りです。
(I)外の対称空間がコンパクト型とよばれる非負曲率をもつ空間の場合。
まず、ある無限次元ヒルベルト空間からその対称空間へのリーマン沈めこみを考え、それによりその部分多様体および平均曲率流を無限次元ヒルベルト空間にリフトします。そのリフトしたものをその無限次元空間が平坦であることを利用して巧妙に調査し、その調査結果を用いて元の部分多様体および平均曲率流に関する結果を導き出すという方法です。この研究方法は、コンパクト型対称空間内の部分多様体およびt平均曲率流をその空間の線形化である無限次元ヒルベルト空間内の研究に還元して行うというものと解釈されます。
(II)外の対称空間が非コンパクト型とよばれる非正曲率をもつ空間の場合。
まず、外の対称空間,部分多様体およびおよび平均曲率流を複素化することにより、無限の彼方に消えうせていた幾何構造を捉えます。次に、ある無限次元(アンチケーラー)擬ヒルベルト空間からその複素化された対称空間への擬リーマン沈めこみを考え、それによりその複素化された部分多様体および平均曲率流を擬無限次元ヒルベルト空間にリフトします。そのリフトしたものをその無限次元空間が平坦であることを利用して巧妙に調査し、その調査結果を用いて元の部分多様体および平均曲率流に関する結果を導き出すという方法です。
(その他26編)
・3年生の数研では、リーマン幾何学(加須栄篤著・培風館)の第1章を読んでもらい、ゼミ形式で順番に発表してもらっています。毎回、発表前に1時間程の打ち合わせをして、教科書には、書かれていない具体例、省略されている証明の穴埋め等をした上で、発表をしてもらっています。この本を最後まで読むと微分幾何学の研究者として必要な基礎知識が幅広く修得することができます。
・4年生の卒研では、幾何学的変分問題(西川青季著・岩波書店)を途中を少し飛ばしながら最後までゼミ形式で順番に読んでもらっています。このテキストを読むと幾何解析学の基礎力が身に付きます。ゼミは、次のように進めていきます。毎週一人の方に発表をしてもらいます。発表者は自分で解決できた範囲内で原稿を作成した上、火曜日に私と1時間程度の基本的な打ち合わせをします。このテキストの内容について紹介します。 7つのミレニアム懸賞問題の一つである3次元ポアンカレ予想が、2002年にペレルマンによって解決されました。その解決に用いられたのがリッチ流方程式とよばれるある種の擬放物型非線形発展方程式の解(この解はリッチ流とよばれるリーマン計量の1パラメーター族)の研究です。このリッチ流方程式の研究は、ペレルマンよりも前にハミルトンにより本格的に行われていました。一方、私の研究している平均曲率流方程式も、リッチ流方程式と同種の擬放物型非線形偏微分方程式であり、この解は平均曲率流とよばれる、ある与えられた多様体Mからある与えられたより次元の高いリーマン多様体(N,g)へのはめ込みの1パラメーター族です。各はめ込みの像は(N,g)内のリーマン部分多様体とよばれる図形を与えており、その1パラメーター族は(N,g)内の図形の1パラメーター族を与えることになります。一つシンプルな例を挙げると、Mが円周で(N,g)が2次元ユークリッド平面の場合、初期図形が楕円の境界線の場合、これを発する平均曲率流は小さくかつまん丸くなりながら1点に崩壊します。平均曲率流の研究を利用して、ある条件を満たす図形の存在性を証明したりすることができます。このテキストの前半部では、リーマン多様体上のベクトルバンンドルおよびそのバンドルの接続理論をベースに調和写像(エネルギー汎関数の臨界点)について学べ、後半部では、放物型調和写像方程式とよばれるある種の放物型非線形偏微分方程式について学ぶことが出来ます。その結果、リッチ流、および、平均曲率流を研究するためのベースをつくることができます。
・院生のゼミでは、次のいずれかのテキストを読んでもらいゼミを行っています。
その他、平均曲率流等に関する論文も読んでもらっています。