中川 裕之 | 教員紹介 | 東京理科大学 理学部第一部数学科(なかがわ ひろゆき)

連絡先

E-mail: hi-nakagawa@rs.tus.ac.jp(SPAM対策の為アットマークは全角です)

研究分野

証明、類推

研究内容

数学教育とは数学の教え方を学ぶものと思われがちです。もちろん教え方も扱いますが,その教え方を生み出す原理まで明らかにします。すなわち,数学教育学とは,教科内容の本質を追求し,学習や指導の原理を明らかにする学問といえるでしょう。

私の研究では特に「類推」に注目して,類推を用いた学習や指導の原理を探求しています。類推とは簡単に言えば,知りたいことや未知のことを,それとよく似た既知のことにたとえて考えることです。数学では未知のものについて考えるときに既知のものを活かすることが多いですので,類推が活躍する場面が多いです。例えば,例題を参考にして練習問題を解くのも類推の一例です。例題をうまく活用できれば練習問題は簡単に解けるのですが,それができる生徒ばかりではありません。それゆえ,生徒の類推能力を育成し,能率的に類推できるようにすれば,数学を得意な生徒を増やすことができると期待して研究を進めています。

主要論文・著書・学会発表

  • Taro Fujita, Hiroyuki Nakagawa, Hiroyuki Sasa, Satoshi Enomoto, Mitsunori Yatsuka & Mikio Miyazaki,Japanese teachers’ mental readiness for online teaching of mathematics following unexpected school closures,International Journal of Mathematical Education in Science and Technology,2021, Published online.
  • 和田信哉,上ヶ谷友佑,中川裕之,影山和也,山口武志,数学の授業における考察対象の存在論的様相の顕在化─Eulerの活動と数学の授業における考察対象の進化論的発展の対比を通して─,全国数学教育学会誌数学教育学研究第26巻第2号(2021),pp.31-43.
  • 中川裕之,類推においてベースの評価を促す方法に関する一考察―ターゲットとベースの類似性の捉え方に焦点を当てて―,日本科学教育学会誌科学教育研究Vol.43 No.4(2019), pp. 438-450.
  • 和田信哉,中川裕之,上ヶ谷友佑,影山和也,山口武志,数学における考察対象の存在論的様相─Eulerによる「無限解析」の記号論的分析─, 全国数学教育学会誌数学教育学研究第25巻第2号(2019),pp. 55-64.
  • 中川裕之,類推の振り返り方に関する研究―類似な条件におきかえて命題をみつける類推に限定して―, 日本数学教育学会誌数学教育学論究97巻Vol.105・106(2017), pp. 1-24.
  • 中川裕之,類比の関係に基づいて命題を発展させる活動について, 日本数学教育学会誌数学教育学論究第87巻Vo l.85(2006),pp. 22-41.

卒研・院生の指導内容

私の研究室では,中学・高校で学んできた数学を「教える立場」から追究し深く理解し直すことから始めます。そして,数学の深い理解に基づくとともに認知科学や心理学の知見を活かして,子どもの思考力や創造性を育成する教材,指導法・評価法,カリキュラムの開発を行っています。また,実験授業や調査を通してそれらの有効性や実践可能性を科学的に究明しています。そこでは,研究対象を類推に限定せず,生徒の多様な思考を研究対象とし,数学的な見方・考え方を育成する教育の在り方を探っています。

担当科目(年度により変動)

  • 情報数学特別講義(数学科3年生、前期)
  • 数学科教育論1(数学科3年生、前期)
  • 情報科教育法1(数学科3年生、前期)
  • 数学科教育論2(数学科3年生、後期)
  • 情報科教育法2(数学科3年生、後期)
  • 卒業研究(数学科4年生、通年)

学部学生へのメッセージ

数学科の学生の中には教員を目指している方もいると思われます。数学を面白く、分かりやすく教える指導法は多様です。細かなパーツの組み合わせを考えると無数にあると言ってもよいでしょう。では、無数にある指導法の中から使用すべき指導法を選ぶにはどうすればよいのでしょうか。その選択では二つの理解が重要となります。一つは生徒理解、もう一つは教える数学の理解です。生徒理解は生徒を目の前にして実践的に学ぶ割合が大きいですので教育実習以降の課題となります。したがって、学部時代に大切となるのは数学の理解です。是非とも大学での数学をしっかりと学んでもらいたいと考えます。そのうえで、学校数学(中学校や高等学校で学ぶ数学)を見直してみてください。選ぶべき指導法が見えてくるはずです。その際、学校数学は一度学んできた数学ですので十分に理解できていると考える(誤解している)学生の方もいる(多い)と思われます。そのような学生の方には是非とも私の授業(数学科教育論)を受けて、自分の理解がどの程度のものかを試していただきたいと思います。教師は生徒と授業内容で勝負するものです。私も常にそうしたい、そうすべきと考えております。授業にて挑戦者をお待ちしております。よろしくお願いいたします。

高校生へのメッセージ

数学の面白さの一つに解けたときの喜びがあります。見えなかった補助線が見えてくる、見えなかった文字式が見えてくる。解けることで見えなかったものが見えるようになる自分の変化が何とも嬉しいものです。成長した、変われたと実感できる瞬間です。一方、教えることの面白さにも似たものがあります。分からなかった定理の意味が分かるようになる、気づかなかった解法に気づける。この経験をするのは教えた相手になりますが、この経験の手助けをできることが教えることの面白さの一つです。自分が教えることで友人の、または後輩の表情が笑顔に、驚きに変わる。その変化を起こせたことが何とも嬉しいものです。そのような二つの面白さを経験できるのが数学科の教員です。そして、私の専門分野である数学教育学はそのような数学の指導法、教育法に関する学問です。この学問を極めれば極めるほどよい教師になれます。教えることが好きな人、数学が好きな人(数学好きを増やしたい人)は、是非とも東京理科大学に入学して私の授業、指導を受けてみてください。教師としての可能性、能力が飛躍的に向上する嬉しさを経験できるはずです。お待ちしております。